多言語話者とは?

多言語話者とは、読んで字のごとく多くの言語を話す人のことを指します。日本だと、2カ国語以上話せるのなら多言語話者にカテゴライズされる場合もありますが、英語では言語の習得数によって呼び方が異なります。

・Monolingual    単一言語話者

・Bilingual      二言語話者

・Trilingual     三言語話者

3カ国語以上の多言語話者になると、下記のように表現されます。

・Multilingual

・Plurilingual

・Polyglot

ケンブリッジ辞典によると、二言語以上を話す人のことをMultilingualと呼ぶと定義されています。

細分化して訳するとMultilingualは多言語、そしてPlurilingualには複言語となります。しかし、Plurilingualという単語は、現在英語圏ではほとんど使用されていません。

そのため、多言語話者を英訳するならMultilingualかPolyglotを使用すると良いでしょう。Multilingualはラテン語から、そしてPolyglotはギリシャ語を起源とする言葉で、Polyglotのほうが多言語話者を意味する言葉としてよりフォーマルな印象があります。

マルチリンガルとの違い

英語では言語の習得数によって呼び方が変わってきます。多言語話者をそのまま英訳すると、マルチリンガル(Multilingual)になります。マルチリンガルは複数の言語を操れる人を指します。バイリンガルやトリリンガルはどうでしょうか。実は話す言語の数によって名称が変わってきます。

言語の数 英語名
2言語 bilingual(バイリンガル)
3言語 trilingual(トリリンガル)
4言語 quadrilingual(クワドリンガル)
5言語 quinqulingual
複数 multilingual(マルチリンガル)
 

言葉の数が増えるにつれて、バイ→トリ→クワドと変化していきます。リンガルは全てに共通していてlingua(言葉)と、-al(性質)という意味を表します。では、バイ、トリ、クワドは数字の1、2、3という意味になるのは想像できますが、なぜone、two、threeではないのでしょう。

実は、バイ、トリ、クワドはそれぞれ、「bi」、「tri」、「quadr」のラテン語の数字に由来しています。したがって、何カ国か分からないけど、複数の言語を話す人を指す場合はマルチリンガルあるいはポリグロットと表現した方が良いかもしれません。多言語話者は複数の言語を話す人と定義します。

58カ国語を話すギネス記録

人間はいくつの言語を話すことができるのでしょうか?

日本はモノリンガルの国なので、バイリンガルになるのも一苦労です。三ヶ国語や四ヶ国以上になると、想像する事すら難しいです。

Harold Williams氏は58カ国語を話す人ということでギネス記録に認定されました。雑誌タイムの編集者でありながら驚くべき多言語話者でした。神父だった父は、彼に古典文学を教えました。彼が7歳の頃にはすでに、ラテン語を習得していました。彼は様々な言語に翻訳された新約聖書を通して、複数の言語を獲得していきました。

ハイパーポリグロット

世界中には数十の言語を操る多言語話者が存在しているようです。彼らはハイパーポリグロットと呼ばれています。ちなみに、マルチリンガルもポリグロットも多言語話者という意味ですが、「Multilingual」(マルチリンガル)はラテン語から、「Polyglot」(ポリグロット)はギリシャ語からぞれぞれ起源とする言葉です。最近で、4ヶ国語以上言語を操る人をポリグロットと呼ぶことが多くなってきました。

特に、ハイパーポリグロットは数十の言語を操る人を指し、その能力にも注目が集まっています。過去の歴史を振り返ると、偉大なハイパーポリグロットが多数存在していることが分かりました。

・Powell Janulus 42ヶ国語 通訳者
・Kató Lomb 通訳9~10ヶ国語、翻訳16ヶ国語 通訳者
・Harold Williams 58ヶ国語 編集者
・Kenneth Locke Hale 50ヶ国語以上 言語学者
・Michael Ventris 線文字B解読可 哲学者、建築家
・Guiseppe Caspar Mezzofanti ハイパーポリグロット アラビア語の教授
・Sir John Bowring 100ヶ国語を話し200ヶ国語に精通 知事、作家、学者
・Georges Dumezil 200ヶ国語話し読める 哲学者
・Emil Krebs 68ヶ国語書き、話せる 外交官
・Ferenc Kemény 20~30ヶ国語を話し、書き、翻訳 政役員、翻訳者

半数以上のハイパーポリグロットが40ヶ国語以上を操っていることが分かります。彼らの職業をまとめてみると、学者が多いことも判明しました。日常的に言語に触れている通訳や翻訳者だけではなく、言葉や思想を追求する人もポリグロットになる素質があると言う事なのでしょうか?

 

多言語話者になるには

多言語話者の脳

多言語話者の脳の仕組みはいったいどうなっているのでしょうか?最近の研究によれば、バイリンガルの人は頭の中に別々に働く複数の言語脳を持っているのではなく、一つの「2ヶ国語脳」、「3ヶ国語脳」、「4ヶ国語」をもっているようです。

バイリンガルの脳仕組みが解明される前は、複数の言語を学ぶことは脳に悪影響を与えると考えられていたそうですが、実は多言語話者が急に母国語の単語を忘れたり・混乱しているのは脳の認識能力が向上している証拠で、言語脳がまた新しい言語を習得しようとアップデートしていたからなのです。

性格

外国語の学習に適した性格はあるのでしょうか。第二言語習得に影響を与える性格要因には「外向性」「自尊心」「不安」「共感」などが挙げられます。

外国語を学ぶ際には、外向的性格の方が積極的にコミュニケーションをとれるので有利だと感じます。

実は外向的・内向的な性格、それぞれ長所と短所があります。外向的な性格の人はインタラクティブな活動やアウトプットを好み、一人で黙々とするライティングや暗記は苦手です。一方で、内向的な人は積極的なコミュニケーションは苦手ですが、一人でコツコツとする作業は得意です。

勉強法

多言語話者になるために自分の性格や思考に合った勉強法を選ぶことが大切です。逆に言えば、どんな性格の人も自分に合った学習スタイルを確立すれば誰でも多言語話者になれるということです。

メリット

複数の言語を話すメリットは一般的には就職に有利とか、海外旅行で現地の人と交流できるなどが挙げられます。ある実証研究によれば、バイリンガルになることで私たちの脳や心にも良い影響を与えることが明らかになっています。

一つ目は、精神的な柔軟性が養われ変化に対して情報を効率よく処理することができるようになります。複数の言語の処理を日常的に行うことで、様々な予想外の経験し、物事を柔軟にとられることができるようになります。

二つ目は、認知予備力を強化することができます。複数の言語を話すことで、身体を刺激して老化を防ぐことができます。認知症の発病を防ぐ効果もあるようです。

デメリット

バイリンガルがまだ認知される前は、複数の言語を学ぶことは語彙力を培う上で不利益になり、IQを低下させると考えれてました。1960年代ごろまでのバイリンガル教育論では、否定的な意見が多かったようです。しかし、その後は脳を刺激することが判明したり、認知機能を向上させるなどの研究が数多く発表されてきました。そのためバイリンガルに対する否定的な意見は少なくなってきました。

ただし、バイリンガルの子供を育てる時に注意したいことは、母国語が不完全なセミリンガル(ダブルリミテッド)の子供にしないことです。セミリンガルとは、二ヶ国語を話したりはできるが、両言語とも年相応の言語レベルに達していない状態を指します。セミリンガルを防ぐために母国語の確立が必要不可欠です。子育てにおいては、家庭内で言語使用のルールを決めたり、間違ったら訂正するなどの習慣が必要です。

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